とどけこたつみかん

3.11の震災後、東日本から宮崎に移住してきた方がたくさんいます。そのほとんどは「東日本は住めるような状況ではない」と感じて避難してきた人たちです。 家族を残してきた方、両親の理解を得られないまま子供たちのために全てを捨ててきた方、友人にハッキリした理由を言えないまま飛び出してきた方。

「自分だけ逃げてきてよかったのだろうか」
「何か自分にできることはないだろうか」

それぞれ様々な事情を抱えながら毎日自問自答しています。放射能関連の悪い知らせを聞くたびに未だ向こうで暮らす大切な人に知らせたい気持ちで一杯になります。

この悪い知らせを聞いたなら、今すぐ自分たちと同じように移住してほしい。しかし全ての生活を捨てて移住しろとは簡単に言えるものではありません。妊婦さんや病人が家族の方、農業など土地に根ざした生活をしている方などもいます。ただいたずらに不安を煽って相手を傷つけるようなことはしたくない。大切な人は一体何を伝えれば動いてくれるのでしょうか。

そんな優しい想いをみかんにのせて届けてもらいました。自分たちが元気に収穫している姿を写真におさめ、一言メッセージを添えて。

「宮崎に引っ越しました!」
「こっちにきたら連絡ちょうだいね」
「元気でやってます!」
「正月くらいゆっくりね」
「いつでも遊びにおいで」

そんなメッセージや写真を見てもらいながら、温かいこたつで私の収穫したみかんを食べてもらおう。こたつに座るたび遠く宮崎で元気に暮らす自分たちの想いを感じてもらおう---。

開催3日前に告知したにも関わらず、14家族、計27名が参加。全部で66個の想いが東日本で暮らす大切な人の元へ届けられました。

参加者の多くは農作業などしたことがなく、みかんの収穫は初めてという方がほとんど。これまで都会で生活してきただけに、土に触れ自然の中で食べ物を収穫することは、慣れない新しい土地での生活を優しく包んでくれるようでした。

鮮やかなオレンジ色のみかん。木漏れ日の中で子供たちと無邪気に食べた甘いみかん。本当に素敵な時間を過ごした笑顔は優しい想いと共にしっかりとこたつに届けられたことでしょう。

笑顔と食べ物。

これ以上は何もいらないはずです。目の前においしい食べ物があるのになぜ離れて暮らさなければならないのでしょうか。

実はこの問いこそが、今私たちが最も大切にしなければいけないことではないかと考えます。

おいしいと思うのは放射能に汚染されていないからでもなく無農薬だからでもありません。想いが込もったものだからこそ、想いが伝わるからこそおいしいんです。

今回のとどけこたつみかんを通じて参加者のみならず多くの人がそのことに気づいてくれる事を祈っています。


参加者の声

3月11日に地震と福島原発事故があって3月16日に息子を連れて千葉を後にしました。それきり戻っていません。そして離れてしまった仲間に何も言えないまま過ごしてきました。
そんな時に「とどけこたつみかん」と出会ったのです。千葉のみんなを想い自分が収穫したみかんを届ける…これならやれるかもと思い、勇気を出して9ヶ月ぶりに200人以上の人たちへメールしました。
そうしたら千葉の友達や先輩後輩から優しいメールがいっぱい届いたんです。
「元気で良かった!」
「連絡ありがとう、急にいなくなって心配していたんだよ。」
「宮崎いいなー、今度遊びに行くね♪」
メール読むたびに1人1人の笑顔が浮かんできて泣きました。今までの重苦しい気持ちを洗い流してくれる嬉しい涙でした。

福島原発事故の前から日本(特に首都圏)の子どもたちを取り巻く環境は安心できるものではなかったと思います。そんな中同じ想いで「一緒にここで力を合わせて頑張ろう。ずっと子育てしていこうね。」って励まし合ってきた大切な友達。
9ヶ月前に何も言えずにいきなりいなくなってしまった不義理な私なのにみんな優しくて…千葉が恋しくてたまりません。
ずっと自分を責めて勝手に背負いこんできた人たち…今こうしてつながりを持てたことに感謝しています。

「とどけこたつみかん」は私を深い苦しみの淵から救ってくれました。こんなに心に響く計画を考えて実行してくれた野良!さんに本当に感謝しています。ありがとうございました。(F.H)

あの場にいた記憶が宝物でしたが、こうしてみなさんの笑顔とまなざしを見ることができて、なんて美しいひとときだったのだろうと改めて胸がいっぱいになりました。
みかんって、日本人にとって特別な存在かと思います。フレンドリーであり、日常的であり、平和の象徴であり、かつ神聖なもの。だからかな。あの日の感想は「幸せ」、これに尽きます。
実際にみかんはお味がおいしいとの評判で、祖父母&両親からはなくなったらまたお願いできないのかしら~なんて発言も飛び出しておりました。野性味あるけど角がまあるいお味がよかったようです。(M.I)

「とどけこたつみかん」のみかん狩りに参加してきました。 師匠にみかん畑を案内して頂き、収穫の仕方を教わり、作業開始です。
大人たちは、「収穫→箱詰め→時々、食べる」、子どもたちは、「食べる→遊ぶ→時々、お手伝い」…流れをおおまかに言うと、こんな感じです。 完全無農薬というみかんの味は、それはそれは美味しくて!そして、子どもたちの食べること食べること!口いっぱいにみかんを頬張る姿がなんとも微笑ましかったです。
「東日本に住む大切な人たちへの想いを宮崎のみかんと共に届けましょう」というこの企画。 参加した皆さんは自分たちが収穫したみかんを丁寧に箱に詰め、送る方へのメッセージとその場で撮影した作業の様子の写真を一緒に入れ、箱を閉じていました。 箱の内側いっぱいにメッセージを書き込んでいる方もいましたよ。
今回、私は作業のみの参加でした。みかんを届けたい東日本に住む大切な人…。「お正月は帰って来ない方がいいよ」と言った妹、「宮崎に住んでいて、良かったね…」と言った友人、半泣きで「水を送って」と電話をしてきた友人〜何人も顔が浮かんだものの、私には掛ける言葉がまだ見つからなくて。 「宮崎で、あなたを想っているからね。」心の中でそう思うだけしか、今はできずにいます。
この日の収穫を終え、みかん師匠の「今日は良く眠れますよ。」との言葉通り、心地良い体の疲れを味わいながら夜は眠りに就きました。 「畑で体を動かすのって、気持ちがいいなぁ…」しみじみとそう思った一日でした。 自然いっぱいの畑と染み入るようなみかんの美味しさに、力をもらった気がします。温かく迎えて下さった師匠、農園の方々、そして、この企画に奔走してくださった方々、どうもありがとうございました。 みかんとともに、参加した皆さんの想いが、大切な「あなた」に届きますように。 (C.H)

今回、埼玉に住む義理の両親にみかんを送りました。 3.11の震災直後、宮崎の母宅に1歳になったばかりの息子と宮崎に避難しましたが、5月には千葉に戻り普通に生活をしていました。しかし息子への放射能の影響の恐れから、8月から再び宮崎に母子避難をしています。 こちらに来てから、ときどき携帯で撮った写真を義理の両親に送ってはいましたが、ちゃんと挨拶もせずに宮崎に来てしまったことをずっと後悔していました。優しい方達ですから、言葉にはしませんが、可愛い孫に会いたいでしょうし、成長を見たいと思っていることと思います。
今回この企画に参加させていただき、先日ようやくそのことを詫びることができ、またこちらで楽しく生活していることを伝えることができました。本当にありがとうございました。 また息子が真剣な顔でみかんを撮っている素敵な写真まで撮っていただき感激です!きっと、義理の両親も孫の成長に顔をほころばせていることでしょう。 「おじいちゃん、おばあちゃんに美味しいみかんを食べてもらおうね。僕がとったみかんですよーって送ろうね。」と、息子ととったみかん。みかんと一緒に、私たちの心も届いていれば嬉しいです。 今回こういった機会をもうけてくださって、本当にありがとうございました。 (A.S)


みかんを受け取った人の声(一部抜粋紹介)

おいしいですね。実家に配ったりしてみんなで食べようと思います。みなさんの気持ちでこちらがほっこりさせてもらいました!次回はぜひ参加側に回ります。
送信者:現在東京都大田区にお住まいで宮崎に移住を決めている方

今みかん届きました。思ったより汚なかったけど、そこがまた無農薬って感じで♪みかん明日友達にも届けます。ありがとうございました!身体に気をつけて頑張ってくださいね。
送信者:千葉県千葉市在住、宮崎に短期保養に来たお母さん

一つ一つ元気な顔のみかんは、想いを込めて育て上げ収穫し箱詰めしてくれたHさん、Y君、皆さんの笑顔が想い浮かびました。大切にいただきます。
送信者:千葉県千葉市在住、食や暮らしの安全にとことんこだわって4人のお子さんを育てあげたお母さん

昨日、かわいい、自然育ちのみかんが届きました♪どうもありがとうございました。人間と同じか、なんかたくましさを感じるみかんたちですね。なんでもなめる6ヶ月の我が家の赤ちゃんにも安心して近くにおけます。 (中略)宮崎の暮らし、すごく素敵です!自然がぴったり近くにあって、うらやましい。何かの折りにお話聞いてみたいです♪
送信者:千葉県千葉市在住のお母さん

遅くなりましたが、みかん届きました!とっても甘いんですけど程よい酸味もあってと~~っても美味しいです(^-^)/。熟してやわらかくなっているのも皮がしっかりしているからか、痛んだりしていませんでした。 この企画に関わったみなさまの思いとYくんの笑顔に、思わず涙が出ました。みなさまありがとうございます! そして、勇気と元気をいただきました!!私も頑張ろうっと。
送信者:千葉県から奈良へ母子避難中のお母さん

いつもお金を出して買って食べているだけのみかん。今回届けて頂いたみかんをどんな方達がとって、箱詰めしてくれたのか知って感激!寒いなか、小さな子供から年配の方まで、利益の為でなく、顔の知らない私達の為にとって届けて頂いたなんて!大人だけだと思っていたからびっくりしました。ありがとうございました。子供(五歳)と一緒に美味しく頂いています!
送信者:千葉県千葉市在住、宮崎に夏休み短期保養したお母さん

大変な手間で作られた無農薬みかんを、平和に頂く幸せを噛み締めながら感謝の気持ちでいっぱいです。様々な思いを温かさにかえて、活動の発展をお祈りしていますm(__)m
送信者:千葉県東金市在住のお母さん