2013年1月26日、宮崎県綾町にある農苑に7組の参加者が集まり、白菜、大根、人参、葱、ほうれんそうを収穫、農苑の春菊、エリンギと一緒に「おなべやさい」として遠く離れた大切な人に届けました。
昨年も行われた「とどけおなべやさい」。前回は一日目は餅つき、二日目は野菜の収穫という二日間の日程で行われましたが今年は野菜の収穫だけです。
今回は告知が10日前だったこともあり参加者は少なめでしたが、快晴の中ほのぼのとした雰囲気ではじめての収穫に参加者は驚きの連続でした。
スーパーで見る白菜は虫食いや変色がある外葉を全て取り除いた状態で売られています。子供達にとっても、あるいは大人たちにとっても畑に育っている白菜を見るのは新鮮。包丁を使って子どもたちと上手に収穫していました。
次は大根。大根もやっぱりスーパーでは葉っぱがついた状態で売られることはまずありません。季節的にもう葉が変色してしまっていてあまり見栄えがいいものではありませんが、無農薬だから食べても大丈夫。なによりとってしまうことで、そこに葉っぱがあったことすら想像しないまま食べられていくのはなんだか寂しいもの。ちょっとでも畑に育っていたそのままの形で送ってあげたいから、葉っぱはとらないことにしました。
大根が終わったら葱の収穫へ。葱は簡単に抜けそうなようで、なかなかしっかり根が張っています。力任せに引っ張ると外側の葉がむけてしまうので、一本ずつゆっくり慎重に引きぬいていきました。通常出荷する時は泥のついた外の葉は取り除き、根を切り、先端を切って8割は白い部分だけにしたものを水でキレイに洗って出すのが普通です。でもやっぱり、そのままの形で送りました。葱の根も天ぷらにして食べるとおいしいんですよ。
すぐ隣りの人参畑へ。人参が畑になっている姿にまず感動の声があがります。大小さまざまな人参があり、時折こんなに大きな人参も!大きなものが獲れれば獲れるほど本来嬉しいはずですが、こういった大きいものは規格外として出荷出来ません。大きいものだけでなく、二股にわかれたもの、ワレが入ったもの、横にしまが入ったような白い傷があるもの、スーパーに並ぶことができる人参はこういった厳しい基準をクリアしたいわば「普通の」人参だけ。個性のある人参が本当はたくさんあることもまた、多くの人が目にすることがない人参の本当の姿。こういった出荷できないB品人参も今回は普通の人参とは別の袋に分けて詰め込みました。
最後はほうれんそう。土の中に包丁を入れて水平にすべらせ、主根を丁寧に切り取って収穫します。今までのものとは違ってとても繊細な作業。誰かがほうれん草をちょっと食べると子どもたちも真似して食べはじめ・・・結局みんなで食べてみて、その甘さに感動していました。
収穫が終わって農苑にもどると採れたてにんじんのジュースが用意されていました。砂糖も何も入れていない人参の甘さに驚いたあとはみんなでお昼ごはんです。
ごちそうさまのあと、収穫中に撮影した写真にメッセージを書き、住所を書いてからみんなで協力して箱詰め。結構バタバタしましたが全部で34個のおなべやさいセットを梱包。なかなか量があったので最後の一つのダンボールをガムテープで止めると一同「できた!」という達成感に包まれました。
今日、ご参加いただいた方々それぞれが想いを詰め込んで送ったように、農苑の方々にもそれぞれいろいろな人生があり、さまざまな想いで送っていることを少しでも知っていただけたらと思い、最後は農苑の方々に自己紹介をしていただきました。
安全・安心と叫ばれるようになり、ラベル表示を吟味するのが普通になりました。でも、この日送ったおなべやさいにはラベルはありません。ラベルがない代わりに入っていたのは送った人の想い。
本当はそれで充分。「無農薬」や「有機」という付加価値競争の中においしさを見出すのではなく、作り手の想いにおいしさを見出して欲しい。心から感謝とともに手をあわせ、「いただきます」と言う時の心の豊かさを知ってほしい。自分のために収穫してくれた野菜を食べたとき、いつものおいしいとは違う心の豊かさがそこにはあるはずです。
Photo Report
企画・協力
おなべやさいと一緒に入れた紹介
あなたのところでも野良配りを!
このイベントはより大きく盛大にしていくことが目的ではありません。小さくても全国いろいろな場所で行われるようになり、より多くの人が大切なものを見つめなおすきっかけとなれれば本望です。
もし共感していただけたら是非あなたのところでも野良配りを実行してください。その際このページが少しでも参考になれれば幸いです。
今回使用したロゴデータを提供いたしますので必要であれば活用して下さい。著作権は放棄しませんが、非営利目的であればどなたでも無料で使用可能です。開催の際ご一報いただければ野良!のページでも紹介させていただきます。
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イベントを終えて
昨年は二日間にも関わらず、震災後に避難・移住してきた家族を中心にたくさんの参加がありましたが、今回はほとんど参加がありませんでした。
「宮崎の安全な野菜を東日本に送ってあげたい」と言っていた避難・移住者は今どんな気持ちでいるのか。ひとくくりにいうことはできるだけ避けたいですが、決してその気持ちを忘れてしまったわけではありません。
「おいしい野菜」を送るのはいいけれど「安全な野菜」を送ることはしたくない。自分は「気持ち」を送っているつもりでも、相手にとってはそうではないかもしれない。そこにはいろんな葛藤があります。
ただひとつ間違いないこと。それは何よりまず、自分たちがこの新しい土地で輝いて生きていくこと。
泣きながら新しい土地を選択した「避難者」ではなく、自分の意思と自分の価値判断で新しい土地を選択した移住者になること。
東日本大震災からもうすぐ2年。もう避難者はいなくなったのかもしれません。移住者はいつか地元の人になって、自分が立っている大好きな土地から、純粋に「おいしい野菜」を送る日がくるのだと思います。
今回は参加者が少なかったので中止にしようとも思いましたが、以前とは違う新たな野良配りの形が少し見えたため、中止にせず開催して本当によかったと思っています。野良!のイベントは参加者によって作られていることを改めて実感した回でした。
形を変えた次回の野良配りにどうぞご期待ください。