しゃべくり野草ごはん♪

2012年4月27日、宮崎県綾町の杢道にて、郷土料理研究をしている野村美智子先生と野草を摘みにでかけました。

3月末に実施した野草企画、「春の天ぷら祭り」では60名近くの参加者で大賑わい。RAWさんのおかげで天ぷらも最高においしい会でしたが、その反面じっくり野村先生に野草について質問する時間が持てませんでした。

だから今回は少人数でのんびり野草を摘み、みんなでご飯を作る会。野村先生にもいっぱい質問していろんな楽しいお話を聞きました。


集合場所の公民館で少しお話した後、みんなで野草を摘みに出発!

当日はとってもいい天気。晴れ渡る空、澄んだ空気、美しい水、少しひんやりしたそよ風。綾の名物である照葉樹林もモコモコといろんな緑に染まっています。


まずはすぐ近くを流れる川に向かってのんびり歩き始めました。近くにあった野原でカラスノエンドウ、スズメノエンドウ、スギナ、ヨモギ、セイタカアワダチソウ、クズの芽、シロツメクサなどを教えてもらいました。みなさん何を作るかイメージしながら採ってみてくださいね!


野原で野草を摘んだ後は堤防にあがりました。見晴らしがよくて気持ちいい!日差しは強いけど川のせせらぎと気持ちのいい風が吹いています。


堤防ではイタドリ、ヨメナ、クコなどを教えてもらいました。みなさんおしゃべりに夢中だけどお昼のこと考えてるかな?(笑)


帰りは水路沿いを散策しながら先生のご自宅のお庭へ。ハナイカダ、ミツバ、ユキノシタなどなど。



さぁみんなでごはんをつくりましょう。摘んできた野草をゆがいて水にさらし下ごしらえ。今日は白和え、菜飯、酢の物、みそ汁、寒天ゼリーにしてみます。


野草を摘んでいる間はどうなるか不安だったごはんですが、いろいろ持ち寄ったものも集結してこんなに豪華に。摘んできた野草で作った菜飯・味噌汁・寒天ゼリー・白和え・酢の物・ヨモギのパンケーキ、先生が持ってきてくれた伽羅蕗・ツクシの佃煮・かしのみコンニャク・日向夏、公民館に置いてあったレタスと水菜で作ったサラダ、ミキコさんがお家で焼いてきてくれたパウンドケーキ。お茶は先生の庭で摘んできたミント茶。

自分達で摘んできた野草、自分たちで作ったんだからおいしいに決まってます。お腹いっぱい食べました。


写真撮り忘れてしまったのですが(スミマセン!!)台風の目だったのが酢の物。最後に余った野草を酢の物にしたところ、それぞれ味・香りが主張しすぎてもう何が何やら!特にセイタカアワダチソウの存在感は強烈でした(笑)

でもそれも楽しいものです。みんなでおいしい、おいしくないと言いながら食べるのが先生の狙いでした。おいしくないのも勉強。
「もうちょっと湯がけばよかったな」
「もっと新芽の柔らかいのを選べばよかったな」
「時期的にちょっと遅いかな」
…などなど「おいしくない」には発見がいっぱい。そうしてはじめて自分の知識になるのかもしれませんね。特にこうしてみんなで作るなら、お互い知恵を出しあって工夫して考えて食べなきゃ損。単なるおいしい野草ごはんではなく「おいしくない楽しさ」もちゃんと教えてもらったごはんでした。

「おいしい」だけじゃなく「おいしくない」も暗に教えてくれた野村先生。みんなが持ち帰った酢の物、時間が経つとあくが強くなるので結構心配されてたんですよ。それはきっと野草のもつ風味をしっかり残してギリギリ食べられる頃合いを狙っているからこそ。そういえば湯がいていたのは全部先生でした!

注)「おいしくない」を連呼してますが、正確に言うと「おいしいけどちょっと香りがキツイ」という感じですので念のため!

今日は野草をたくさん使って料理をしたけれど「普段の料理にちょっと野草を入れるのがちょうどいいですよ」と先生。確かにあまり頑張りすぎても続きませんし慣れないうちは失敗も多いです。時期が違えばエグ味も違い、湯がく時間も変わってきます。感覚としてそれを掴むためにも欲張らないでちょっとずつ取り入れてみるのが野草を知る近道かもしれません。

おいしい野草ごはんだけでなく野草との付き合い方まで教えてくださった野村先生に感謝。今回もありがとうございました!

先人からずっと受け継がれてきた野草の知恵。
本で勉強しても実際に野草を前にすると途方に暮れてしまいませんか?

似た草の見分け方、食べ方、どの部分を摘んだらいいの? 時期はいつまでがおいしい?

やっぱり知ってる人と一緒に散策に出かけて直接教えてもらうのが一番。自分の目で見て手で触れて、料理をしてはじめて覚えることがたくさんあります。

綾町で郷土料理を研究している野村美智子さんと野草を摘みに出かけました。気になったことはどんどん質問。最後はみんなでごはんを作っておいしく野草をいただきました。


前回開催した「春の天ぷら祭り」同様、野草を知れば知るほど「自然」というものが身近なってくる気がします。

自然に寄り添う生き方。

野草の存在を知り、野草とともに季節を感じることで随分と自然に近づけた気がしました。

そして大切なのはそれを「伝える」ということ。インターネットも本もないずっと昔から培われ伝えられてきた「食べかた」。「親から子へ、そして孫へ」とはよく言われる言葉ですが、それが家族単位ではなく地域で育まれてきたことを忘れてはいけません。

誰かが亡くなれば地域のみんなが集まりお通夜の準備はもちろん、大勢の弔問客を迎えるためにみんなで食事の準備していたと聞きます。冠婚葬祭をはじめとした季節の節目節目で地域が集まり、ずっと一緒にごはんを作って食べてきたのです。

「食べかた」もこの集まりの中でずっと伝えられてきたのではないでしょうか。娘たちは熟練の母たちの腕を見習い、母たちはご近所さんの料理を食べて作り方を教えてもらう。

この「しゃべくり野草ごはん♪」でも熟練の母たちの腕が光りました。握り飯をさっと50個ほど握ってしまったり、キレイにあくまきを切ったり、上手にすり鉢を使ったり。食材を無駄にしないで使おうとする姿勢、それをテキパキと要領よくこなす姿勢。

改めて今を見直します。冠婚葬祭は全てセレモニーホールなどに任せきり。食事は業者が作った仕出し弁当です。正月は惣菜をスーパーで買って並べればそれなりに豪勢になります。便利さの追求が「お金がなくては生きられない」状況を生み出し、そして「伝える」ということまでも放棄してしまっている現実。

野草の食べかたも、やはり本やインターネットでは伝えられないのです。食べる場所、時期、湯がく時間、調理方法。これまで培われ伝えられてきた知恵、そしてお金に頼ることなく地域で共に生きていくことの大切さ。

きっと今何もしなければ全て捨て去ることになる。今回のイベントや野村先生のお話を通じて痛切に感じました。


企画・協力

講師:郷土料理研究会「杢もく会」 野村美智子
写真:椎屋 翠鈴 加藤 潤一
会場:綾・杢道公民館